2013.08.19

ねね、死す

 「ねね」は、我が家の家族(ネコ)の一人、先週の土曜日に急死した。前日に急に具合が悪くなり入院、翌朝に容態が急変して駆けつけたときには、もう心肺停止状態だった。障がいを持って生まれ、飼い主に見放された子だった。「ねね」を動物病院からもらって間がない頃、毎日新聞の論説委員、野沢和弘さんが「ねこのあくび」というコラムで紹介してくれた。全文紹介して、彼女への供養にしようと思う。

「のびをするのは幸せなネコだけなのよ」と池田彰子さんは言う。ご亭主はユニットケアの特別養護老人ホーム「風の村」を経営する社会福祉法人生活クラブの池田徹理事長。いつだったか、車を運転していたら中島みゆきの「誕生」が流れてきて涙が止まらなくなったという。二分脊椎(せきつい)という障害があり杖(つえ)をついているせいだろうか。

 誰だって生まれるときに聞いた言葉があるはず。耳を澄ませ、思い出そうよ……。そんな歌詞だった。

 その池田夫妻、2匹のネコの<里親募集>の張り紙を動物病院で見た。捨てられていた黒ネコ(1歳)と病気がちな三毛ネコ(2歳)。黒ネコをもらってきたが、もう1匹が気になる。飼い主に連れられて入院したが、それっきり飼い主は姿を見せなくなったという。放って置けなくなり、結局2匹とも引き取ることになった。

 三毛ネコは体のあちこちに障害があり、1日に目薬を4回差さないといけない。黒ネコは部屋の隅に隠れ、抱き上げようとすると爪(つめ)を立てる。

 「捨て猫は狭いかごに入れられるから、のびができなくなるのよ」

 三毛ネコは今も通院しているが、「引き取ってもらっただけでありがたい」と獣医は治療費を受け取ろうとしない。「もう今はうちの子なんだから」と池田さん。互いに譲らず、折半することにした。

 それから3カ月が過ぎた。彰子さんが携帯の写真を見せてくれた。小さな体を思いきりのばし、今にもあくびをしそうな黒ネコが写っていた。2匹とも夜は夫妻がそばにいないと眠らなくなったという。【野沢和弘】<絵・伊賀高史>

毎日新聞 2007年11月15日 東京朝刊