2013.04.12

多床室問題で意見交換

 先日、自民党の国会議員Mさんとお会いした際、多床室問題で意見交換した。別件での面会だし、意見交換と言っても、ほんの2言、3言だったのだが、面白かった。
 自民党は先の総選挙で多床室の復活を公約に掲げた。2002年以降、国は新設特養を実質的に個室ユニット型に限定したが、2年前に成立した地方分権一括法で特養定員は都道府県、政令市が条例に定めることになり、その結果、4人部屋が各自治体で復活しつつあることは、このブログで何度も紹介し、私の考えも述べてきた。各自治体の条例は大まかに分類すると3種類に分かれる。定員を4人以下とするもの(千葉県はこう定めた。残念!)、定員は原則として1名とするが、特に必要と認めた場合は4人以下とするもの、原則として1名とするが特に必要と認めた場合は2人以下とするものの3種類だ。最後のパターンは実質的にユニット型個室しか認めないという判断をしたものと言って良い。岡山県、福岡県、横浜市などがこの決定をしたが、数は決して多くはない。今後、4人部屋が各地で増えていくものと思われる。

 多床室復活に執念を燃やしてきたのが、特養の業界団体、老人福祉施設協議会と、それをバックに参議院議員になったN氏、Mさんとの話の中で多床室問題が話題にのぼった。Mさんは、自分が尊敬する特養経営者が、「料金が同じだとしても4人部屋のほうがよいという人が確かにいるのです」とおっしゃるのだが、そのことについてはどう考えられますかと、私の考え方を尋ねた。私は、「実際に料金を同じにすべきではないでしょうか」と一言申し上げ、Mさんはそれですべてわかってくださったと私には思えた。

 もし、料金が同じで4人部屋を望む人がいるなら、4人部屋をつくることに何の問題もない。選択の自由だから。しかし、現実は(所得によって額が異なるが)、4人部屋のほうがかなり安い。低所得の人にとってはユニット型個室の負担が厳しく、そのために4人部屋を望む人が多いのだ。現に好みの問題として4人部屋を求める人がいるというなら、料金を同じにしないとそのニーズは正確に把握できない。

 赤の他人が何年も暮らす場であり、しかも要介護度が4、5の人が大半を占めるのが特養だ。自分の意思で部屋を離れることもできず、多くの時間を同室者とともに過ごす。ポータブルトイレやおむつ交換での排せつの音、臭い、暑がりの人と寒がりの人の同室でエアコンの温度調節トラブルなどが絶えないという。同室者の会話はほとんどないという研究成果もある。これからの特養利用者は我慢に慣れた戦前、戦中世代から、自己主張が激しい団塊世代に移っていく。そして、未だに特養の70%が4人部屋なのだ。なのに、これから新たに4人部屋をつくるというのはどう考えても天下の愚策と言わざるを得ない。

 特養の待機者は42万人におよび、一向に減らないのにはわけがある。認知症グループホームや有料老人ホーム、最近ではサービス付き高齢者住宅など選択肢が広がったように見えるが、低所得者への家賃補助があるのは特養だけだ。しかも4人部屋なら家賃(水光熱費を含めて)月1万円で入居できるのだ。このいびつな家賃補助制度が、特養だけに、しかも4人部屋に需要が集中する理由だ。

 繰り返すが、料金が同じでも4人部屋を好む人が一体何人いるだろうか。最近1カ月近く入院したが、病院の4人部屋ですら、昼間もカーテンが閉まっていた。私が若い頃に入退院を繰り返していた頃は、男性の部屋でも確かににぎやかだった。しかし、今は、女性の部屋でも1日中カーテンが開くことがなかった。今の時代、個室はシビルミニマムなのだ。

 Mさんは、打てば響くクレバーな人だった。一言の交換で言いたいことが通じるのは気持ちがいい。