2013.02.04

自由と民主主義をもうやめる

 おい、おい、いきなり何を言うかと思いましたか。表題は、佐伯啓思京都大学大学院教授の著書のタイトル(幻冬舎新書)です。彼は「保守主義者」を自認し、今の日本には保守主義が求められていると言います。そして、私は、「彼の保守主義」にかなり傾倒しています。みなさん、是非この本を読んで、感想を聞かせて下さい。これは2008年に出版されましたが、類書に、今年1月に出版された「日本の宿命」(新潮新書)があります。こちらもお薦めします。
 佐伯氏の影響を受けたことは間違いありませんが、私は、最近「保守」という概念の再発見が必要だと思っています。保守と言えば右翼とほぼ同義語、革新と言えば左翼というのが、長くこの国の常識的な理解でした。しかし、その二項対立が1990年代から崩れてきています。大きな要因は言うまでもなくソ連崩壊、冷戦構造の終結です。革新≒左翼≒社会主義という構造が崩れて、「世の中を変える=革新」の行き先がなくなってしまいました。

 もうひとつは、その10年ほど前からのいわゆる新自由主義、新保守主義の台頭です。アメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権によって主導され、日本では中曽根政権に始まり、小泉、安倍がその路線を踏襲してきたと言えましょう。

 戦後の先進国の経済政策を代表するのはケインズ理論に基づく福祉国家論ですが、これを「自由主義」「保守主義」とすることから、福祉国家から脱皮し、市場競争を徹底することで問題を解決できるとする理論を「新自由主義」「新保守主義」と呼んだということでしょう。新自由主義、新保守主義は、規制緩和、市場改革、官僚制打破、教育改革、さらには憲法改正に至る徹底した「改革」(≒革新)を訴えます。

 一方の勢力、従来は左翼とみなされてきた人たちの多くは、憲法を守ろう、生活困窮者の暮らしを守ろう、環境を守ろう、人と人のつながりを守ろう、コミュニティを守ろうと、「保守」を訴えます。保革が現実にはかなりの部分で逆転しているのです。

 佐伯氏の保守主義は、上記のような薄っぺらな話ではありません。彼の保守主義のもっとも重要な論点は、「戦後民主主義を疑う」ことです。なんだ、それじゃやはり新保守主義ではないかと思われるかもしれません。確かに、左右対立構造の中でポツダム宣言を疑い、日本国憲法を疑い、東京裁判を疑い、戦後民主主義を疑うことは、自動的に「右翼」のレッテルをはられることでした。

 しかし、戦後民主主義のなれの果てが、現在の日本の惨状であることもまた否定しようがないと、佐伯氏同様私も思います。ここらで、戦後民主主義を、そして「自由と民主主義」を根底から見直すことが必要だと、私は強く感じています。そして、本物の「保守主義」を打ち立てるべきだと。

 だれか「保守主義勉強会」をやりませんか。まずは本を読んで下さい。