2011.11.14

人生、ここにあり

 映画「人生、ここにあり」をようやく観ることができた。東京で最近まで上映していたのだが、忙しくてどうしても行くことができなかった。最後になるかと思われた映画館の上映期間もついに過ぎてしまい、DVDができるまで待つしかないかと思っていたら、千葉劇場で12日~12月2日まで上映されることを発見、昨日行ってきた。

 前評判で、大きな筋は知っていた。イタリアは精神病院を無くした国として有名だ。入院患者が地域に戻る上で重要な役割を果たしてきたのが、彼らの就労の場、B型社会的協同組合だ(映画では社会連帯協同組合と訳していた)。従業員の3分の1以上社会的に不利な立場の人を雇用する協同組合に、国や自治体から手厚い支援が提供される。映画は、精神障害を持つ人たちが「寄木作り」の内装業を立ち上げ、市場に参入して成功したB型社会的協同組合の実例をもとにしている。

 私は、観る前から、この映画を「カッコウの巣の上で」の続編、完結編と勝手に位置づけていたのだが、間違いなかった。ご存じの方も多いと思うが、「カッコウ…」は精神病院を舞台とした映画だ。刑務所の強制労働が嫌で精神病者を装い、病院に入院してしまった主人公マクマーフィー(ジャックニコルソン)が、入院患者と接する中で、病院の超管理的なシステムに疑問を抱き、いわば「自由化」の運動を一人で始める。当初は病院スタッフの制裁が怖くて応じなかった患者たちが徐々に生きる喜びに目覚め、病院を抜け出し、セーリングを楽しむ。電気ショックの制裁を受けながらも彼は「自由化闘争」を止めなかった。しかし、最後に待っていたのは、主人公へのロボトミー手術だった。精神病院の実態を告発する映画だが、主人公のロボトミーという終わり方で幕を閉じるのかと救いようのない気持ちになった時、最後に一緒に脱走を計画したインディアン、チーフ(ウィル・サンプソン)が取った行動はー

 観ていない人のために、結末は書かないことにします。レンタルDVDで是非ご覧ください。私の映画ベスト3に入っている作品です。

 「人生、ここにあり」は実話であり、イタリアでは精神病院が現実に無くなっているという事実に、驚く。日本はと言えば、精神病院の平均入院日数が先進国中ダントツに多く、7万人を越える社会的入院患者がいるという。厚労省は、社会的入院患者の地域移行を進めようとしているが、地域資源の不足、偏見のために遅々として進まない。さらに、せっかく空いたベッドに今度は認知症の人が押し込まれ始めている。認知症患者に精神病院という環境は最悪である。

 2つの国の落差はあまりにも大きい。そしてそのイタリアは経済破綻の瀬戸際にある。「そんなことをやっているから、経済破綻するのだ」と見る向きもあろう。しかし、私はそう思わない。ギリシャも含め、EU連合さらに根本的にはグローバリゼーションの荒波が、国ごとの事情、市民生活の多様性、健全性を覆い尽くし、蹂躙しているのだ。

 TPP参加の是非が大きな政治課題になっているが、私たちはどういう国をめざすのか、幸せとは何か、「人生、ここにあり」を観て、もう一度考え直してみたい。