2012.02.22

小中学校にも留年制?

 橋下大阪市長が、小中学生も一定の学力に達しない場合には留年にすべきと発言したらしい。(Yahooニュース)大阪府は学力水準が全国最低ということで、府知事時代から全国学力テストの結果を公表すべしという発言などで、教育委員会と対立してきた。テスト結果の公表問題については、私はどちらが正しいという明確な意見を持ち合わせていなかったが、留年制度は、小中学校のあり方を根底から変えるもので、容認できない。

 学校の目的は、学力の向上以外にないのだろうか。私は、統合教育が時代の流れと考えてきたが、橋本氏は統合教育の是非について見解を表明しているのだろうか。統合教育の反対語は分離教育だ。身体障がいがあるためにバリアだらけの普通学校で学ぶことが困難とされる人、知的障がいのため普通学校では学力が追いつかない人などは、これまで特別支援学校、特別支援学級(旧養護学校、特殊学級)に分離して教育を受けることを基本とされてきた。何らかの障がいを持つ子どもは、小学校に入学する前に就学相談という名の関所を通らなければならない。障がいの程度によって、普通学級、特別支援学級、特別支援学校のうち、どこに入学するかを教育委員会と相談するのだ。親と教委の意向が一致すれば問題ないが、親が普通学級に入れたいが教委はそれが適当ではないと考えた場合、親の意向を押し通すのは容易ではない。教委はあの手、この手で、分離教育を薦める。その逆のパターンはまずない。統合教育を求める親と分離教育を進める教委という図式なのだ。

 何十年も前から、統合教育を進めるための粘り強い運動が全国各地で行われてきた。その結果、教育委員会によって大きな違いがあるが、全体としては統合教育への理解が進んできたと言えよう。千葉県も例外ではない。

 そして、昨年8月、障害者基本法が改正され、統合教育推進、そして本人、保護者の意向を尊重すべきであることが明記された。

 第16条に以下の記載がある。

第十六条  国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は、前項の目的を達成するため、障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない。
3,4項略
 
 障がいを持つ人、保護者の長年の悲願が法文になった。
因みに、改正前の法の目的を大幅に書き換え、第1条は次のように改正された。
 
第一条
この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
 
改正前の条文は以下である。この違い、感動的である。
 
(目的)
第一条 この法律は、障害者のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、 地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もつて障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することを目的とする。
 
 橋本氏は、この改正障害者基本法をどう評価するのか、態度を明らかにしてほしい。一定の学力に達しなければ留年になるなら、多くの知的障がいの子どもは何年も同じ学年に取り残されるだろう。それが可哀そうというなら、普通学級ではなく特別支援学級、特別支援学校に行けという傾向が進むだろう。保護者も涙を飲んでそれを選択する人が増えるだろう。営々と積み上げてきた統合教育推進の流れは、一挙にしぼむと思われる。
 
 学校は、学力を伸ばすことのみが目的の場ではない。多様な子どもたちが集団生活を通して人間性を育んで行く場でもある。小中学校の留年制は、学校を殺伐とした競争社会の縮図にする天下の愚策だ。橋本氏の正体見たり!と言いたい。