2012.03.02

生活クラブと私18 介護事業の開始とコープ共済

 1994年から「たすけあいネットワーク事業」と名付けた介護事業(ほとんどが訪問介護)を始めるにあたって、事業を継続するためにいくつかの裏技を使った。

 まず第一に、当時のホームヘルプは措置制度であり、市町村の直営若しくは社協、福祉公社など「半官」団体が市町村の委託を受けて行なっていた。生協のような民間団体がやろうとしても行政から一切補助金は出ないので、利用者からいただく料金しか収入はない。ヘルパーさんに相応の時給を支払うとしたら、最低でも1時間2000円程度の料金設定をするしかない。しかし、行政が行うホームヘルプは低所得者の場合無料だし、よほど所得が高い人でない限り、数百円程度の自己負担で利用できる。2000円以上の料金設定をしたら、おそらく利用者はごくわずかだろうと判断し、1時間1000円という破格の料金設定にした。破格も破格、事業開始初年度のヘルパーさんの時給を1000円としたから、1円も残らないという常識はずれな仕組みで出発したのだった。(さすがに翌年からは時給を900円に下げさせてもらい、1時間当たり100円だけお金が残るようにした。)

 最初から赤字覚悟の出発だったのだ。

 裏技の一つは、ホームヘルプ事業の開始に合わせて、コープ共済と呼ばれる生協組合員向けの共済事業に取り組み始めたことだ。コープ共済は、日本生協連合会の共済制度で、全国の生協組合員が加入することができる。多くの生協が既に取り組み始めていたが、生活クラブ生協では、どこも参加していなかった。当時、生活クラブグループは、日本生協連が開発する商品への不信感が強く、ほとんどは独自に開発していた。その流れの中で、日本生協連の共済商品も取り扱いを検討する雰囲気ではなかったのだ。(実際、千葉がコープ共済に取り組み始めたことに対して、非難の声が結構聞こえてきた)

 しかし、「共済」というものは、本来、規模が大きいほどメリットが増大するものだ。全国の生協が連帯してつくった共済に参加することをためらう理由はないと考えた。しかも、コープ共済が非常に採算性が高いことを、既に取り組んでいる先輩生協の実績が示していた。

 そこで、私たちは、来たるべき超高齢社会に備えて、そして企業もこの分野に参入してくることが予想される中で、生協が「食の安全」に加えて「老いの安全」をつくりだしていく事業の開始が求められる。しかし、その事業基盤を創っていくに際して、当面は赤字覚悟でやらざるを得ない。なので、コープ共済に取り組み、その収益で当面の赤字を埋めることにしたい。コープ共済は暮らしを支える魅力的な共済であり、また加入することが生活クラブの介護事業基盤を固めていくことにつながるので、その意義も含めて積極的に加入して下さいと呼びかけた。

 結果は、組合員の皆さんの大きな共感を得て、予想を大幅に越える加入者を得ることになった。初年度の収益は確か2000万円超になり、赤字分を埋めて余りある利益を得た。この時のいわゆる初回加入率(全組合員のうち、コープ共済に加入した人の比率、初めて取り組んだ年の加入率を初回加入率という)は、全国最高記録になり、それは今も破られていないらしい。

 コープ共済の加入者は、翌年以降も増え続け、4年くらいはホームヘルプ事業の赤字額を賄うことができた。コープ共済の取り組みを並行しなければ、初期のたすけあいネットワーク事業は成立し得なかったのだ。

 次回は、初期の介護事業を支えたもう一つの仕組み、ケアグループについて書こうと思う。