2012.04.07

原発安全基準決定

 政府が原発の安全基準を決めた。大飯原発稼働に向けた行程が着実に進んでいるということなのだろう。

 JICA前理事長、緒方貞子さんが退任前の記者会見で原発輸出政策を批判したことは、記憶に新しい。現職理事長としてはかなり思い切った発言だったと思う。自分の国でうまくいかないものを他の国に売りつけるのはいかがなものかという趣旨だった。それが「常識」であり、「良識」というものだ。人の道と国の道に違いがあるはずはない。人の道に外れたことは、国はやってはいけないのだ。緒方さんは、その意味で極めて常識的な発言をしたのだった。

 経済界から、政権に対して、原発再稼働に向けた強力な圧力がかかっていることだろう。電力の安定供給が経済界の最優先価値なのだ。マスコミへの圧力も相当なものだろう。はっきりと再稼働を主張する新聞があり、そうでない他紙もだんだん歯切れが悪くなってきているように見える。世論調査では、国民の過半数が原発に頼らないエネルギー政策への転換を求めているが、財界の圧倒的な攻勢の前に、持ちこたえることができるだろうか。

 政権は、脱原発の長期方針を明確に打ち出し、新規の原発建設、そして原発輸出は行わないことを、まず表明すべきだ。原発の耐用年数が40年とすれば、遅くとも40年後に原発はなくなるのだ。それは、世界最大級の事故を起こし、日本だけでなく全世界に大きな影響を与えた国の常識、良識だ。すでに、ドイツ、イタリアなどが脱原発に舵を切っているというのに、本家本元のこのふがいなさは一体何なんだろう。ドイツもイタリアも他国から電気を買っているとかの理屈をつける向きもあるが、そういう問題ではない。これから、何十年、いやもっと長期に渡って残留放射能におびえる生活を余儀なくされるというのに、「電力の安定供給」というもっともらしい理屈で、これからの方向を誤らせていいのだろうか。

 思えば、事故が起きるまで、私たちはずっと原発のない生活は不可能と信じ込まされてきたのではなかったか。それがどうだ。たった54基中1基しか動いていないというのに、私たちは普通の生活を送っているではないか。今夏は不足が見込まれるなどと言われても、もう信じるわけにはいかない。原発がなくても電力不足は起きないという識者の発言に耳を傾けるべきだ。

 大飯原発再稼働については、福井県知事が慎重だし、30キロ圏内に含まれる滋賀県知事、京都府知事も認めていない。悔しいが、橋本大阪市長の発言は、この問題に関する限り、実に小気味いい(嫌いでも、良いものは良いと認めなければ(苦笑))。

 国が、新規建設は行わないと基本政策を明確に打ち出せば、再稼働問題は、地元住民の意思に委ねれば良いのではないか。

 市民の常識、良識を土台にすれば、政治は信頼を回復するだろう。