2012.05.25

入れ墨調査!

橋下大阪市長による入れ墨調査、またまた馬鹿げたことを始めたものだ。

 人目に触れる位置に入れ墨を入れることを認めないという決まりをつくることは理解できる。まずその規程を作ることが先だろう。規定が出来れば、人目につく部分に入れ墨を入れている人は、人目につかないような何らかの対応が求められる。着衣などで隠すことで良いのか、消さなければいけないとするか、議論は必要だろう。

 人目につく入れ墨というのは、「人目につく」のだから、アンケートなど取らなくてもわかるではないか。職員全員にアンケートを取り、しかも提出しない人には昇進させない、さらには懲戒処分も辞さないという。ここまで来ると、異常としか言いようがない。市長は、今回はリーガルチェックも充分やったうえの調査だと、2月に行った政治・組合活動の調査との違いを強調しているという。しかし、アンケートを取らなくてもわかることを、あえてアンケート調査し、無回答なら懲戒も辞さないというのは、知りたいことを知るための調査から、「忠誠度」を測り、不忠者を制裁する道具に変節していると言わざるを得ない。大きな組織のトップは巨大な権力を持っている。その分、権力の行使の仕方で、人間性が浮き彫りになる。「言うこと聞かない奴は昇進させないし、処分するぞ!」とためらいなく恫喝できる思考回路を持った人をトップに戴くことは、何とも危険極まりない。

 市長は、トップの命令に従わないということは民間企業ではあり得ないことだと胸を張るが、入れ墨調査などというくだらない調査を実施している民間企業が、いったいどれくらいあるだろうか。

 産経新聞によると、長期入院など正当な理由以外で調査票を出していない人は40人程度だという。この人たちはなぜ提出しないのだろうか。推測だが、おおよそ3つの理由が考えられる。一つは、人目につかない場所に入れ墨をしている人。人目につかないのだから、「入れ墨はしていない」と返答すればよいようなものだが、同僚など自分以外の人がその事実を知っているため、後々露見することになった場合、懲戒処分は必至だろうと考えて提出をためらっている場合。2番目は、同じく人目につかないところに入れ墨を入れているが、「していない」と回答すれば、誰にも知られることはないと確信している。しかし「うそをつく」ことがためらわれて迷っている人。そして最後に、(入れ墨はしていないが)この種のアンケートに答えることを潔しとしない人だろう。

 君が代斉唱問題、政治・組合活動問題、そして入れ墨問題、テーマは異なるが、共通するのは、どんな命令であろうが部下は従うのが当然という文化を定着させ、それに反旗を翻すものを排除する組織づくりの道具になっているということだ。

 大阪市の職員数は3万3500人だという。私は、「正当な理由」なく提出していない人が40人という「少なさ」に慄然とする。こんなくだらないアンケートに回答を拒否することが、最悪の場合解雇にまでつながりかねないという恐怖が、大阪市を覆っているのだ。回答をしていない人は、生活が崩壊する危険性を感じているだろう。

 それにつけても、労働組合は一体何をしているのだろう。組合として不提出運動を提起するくらいのことが必要だろう。そして、不提出によって昇進停止、さらには懲戒処分を受けることは、不当労働行為であり、断固として職員を守りきるという態度表明をするくらいでなければ、労働組合の存在価値はない。