2012.06.04

昨日の花

 3年くらい前から気になっていたところがある。昨日、ついにそのお宅に伺った。

 茶花と呼ばれるジャンルがある。茶事に使われる花のことだ。茶事は、人をもてなす最高の形式だと思う。茶事を主催する亭主は、招待者に対して心をこめたもてなしを行う。招く人の人柄、生き方、趣味など、さまざまな情報や季節などを総合して、その茶事のコンセプトが決まる。それに基づいて、料理、茶道具、菓子などを選ぶ。この日のために菓子を特注することもある。

 それらのもてなしの重要な要素に「花」がある。多くは床の間の壁に掛ける掛け花で、竹でつくった花入れが良く使われる。この花を「茶花」というのだ。利休が、庭に咲き乱れる朝顔をすべて切って、一輪のみ茶室に生けたという話は、あまりにも有名だ。茶人は、自宅の庭でさまざまな花を育て、茶事ともなれば、その日に飾りたい花を、その日にもっとも望む状態に咲くように、何カ月も前から準備する。

 茶室の花入れは小さい。利休の例のように、1輪に心を込め、それが場を圧倒する迫力を発する、まさに乾坤一擲の行為なのだ。使われる茶花は、通常の花屋さんで見るものとは種類も姿も異なる。だから、そう簡単には手に入らない。自分の庭で栽培するか、山野に分け入って摘んでくるかだ。茶花を扱う花屋さんもなくはないが、少なくとも私は、南青山にある1件しか知らない。

 しかし、ネットで検索し、千葉市若葉区に茶花を扱っているところが1か所あることを、3年前から知ってはいた。ただ、お店を構えているわけでもなさそうだし、何となく躊躇するものがあって、訪ねないでいたのだった。昨日の朝、今日はどんな花を生けようかと、雑誌(和楽)をめくっていると、茶花の特集をしており、それがあまりに素敵で目を奪われた。どうしても茶花を使って生けたくなり、ついにそのお宅に電話したのだった。屋号は「利休庵保利」という。お店があるわけではない。自宅の庭と隣の農地、合わせても100坪くらいの広さで栽培しておられる。ときどき、ホームページを見て、私のように、今日欲しいと無茶な電話をしてくる人がいるが、通常は、お茶のお師匠さんなどが予め予約し、茶事の当日に取りに見えるか、宅配便を使って全国に送るのだということだ。

 ちょうど、茶花の端境期で、しかも何件かの注文を受けて出荷したばかりということで、「あまりないよ」と言いながらも、花屋さんでは決して購入することができない花を手に入れることができた。保利さんは、本職は茶道具屋さんで、今年3月までは千葉のデパートの茶道具売り場にいたとのこと。定年で辞めてからは、毎朝5時半頃から夜7時頃まで、手入れに明け暮れているとのことで、朝ごはん、昼ご飯は、玄関で食べているんですよと笑った。丹精込めた茶花を手に入れることができるようになって本当にうれしい。一本も無駄にできないという思いで、風の村八街に向かった。(利休庵保利http://www.geocities.jp/rikyuuan/hanaya.html

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大きな花瓶に入れる茶花はないので、ここだけは茶花は使っていない。近くの空き地に自生しているウツギと中庭にあった柏葉アジサイ、千鳥草。

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シラン(紫、白)、鳥足升麻(とりあししょうま)、木萩

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松本仙翁(まつもとせんのう 赤の花)、シモツケ(一番高いピンクの花)、日の丸ウツギ(白い花の根本に、ほんのり赤いぼかしが入っているところからついた名だそうだ。)アジサイ

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大山蓮華(中央の、まさに純白のつぼみ)、左に高く伸びているのが、京鹿子(きょうがのこ)(「京鹿子」とは京都で染めた 「鹿の子絞り(かのこしぼり)」のこと。 絞り染めの一種で、鹿の斑点のような模様をぎっしり並べたピンク色の絞りのことーネットで検索)   
左側にある赤い小さな花が仙翁(せんのう)、アジサイ、右下の紫色の花(実際はもう少し鮮明な紫)は、蕪桔梗モドキ(カブラキキョウモドキ)