2012.07.27

伊藤英樹さん

 生活クラブ風の村では、事業所長の研修のために、毎月開催する所長会議の際に2時間の枠をつくり、各界で活躍する方を招いて講義をしてもらうことにした。昨日がその1回目で、NPO井戸端介護の伊藤英樹さんをお迎えした。木更津で「井戸端げんき」など3か所の宅老所を運営する伊藤さんのことは多くの人が知っていることと思う。制度にしばられず、井戸端げんきを必要とするあらゆる人の生活を丸ごと支えようとする活動は全国から注目され、映画にもなった。私は、彼の話しを是非所長に聞いてもらいたいと思ったのだった。

 講義後、懇親会を催したが、その場で私の横に座ったT所長が、いみじくも「ある意味、生活クラブ風の村の対極と言っても良い伊藤さんを、池田さんはなぜ所長研修の講師に選んだのか不思議に思っていた」と語った。まったくもって自然な疑問だ。生活クラブは職員1200人を越える大きな法人で、法人理念、基本姿勢、各事業のマニュアルを整備して、「ケアの標準化」を目指しているが、 井戸端げんきにはそんなものはない。「その人」を支え切るために、とにかくできる限りのことをする。一応はデイサービス事業が基本だが、うちに帰りたくない人がいれば泊まってもらう。自宅に送って、必要があれば添い寝して朝を迎えることさえある。その際の職員の立場はとの問いに、彼は一言、「ボランティアです」。表面的には、まさに、生活クラブの対極にあると言って間違いないだろう。

 私は、福祉の原点は「やむにやまれぬ気持ち」だと思う。放っておけないというやむにやまれぬ気持ちこそが福祉活動の出発点であり、それは当然ながらボランティアだった。対価を求めぬ無償の「思い」から始まっているのだ。井戸端元気の活動は、まさにその原点だと思う。では、生活クラブ風の村はどうか。私は基本は何も変わらないと思っている。確かに、この18年間に組織は大きくなり、意識的に、ある意味「会社」としての組織整備、労働条件整備を行ってきた。しかし、「思い」は井戸端げんきと何も変わっていないと思っている。変わってはいけないとも思っている。事業規模の大小は、本来関係ないのだ。考えてみれば、生活クラブ風の村の事業所だって、単体の規模は井戸端げんきとそう変わらないところが多い。目の前にいる利用者との関係は、あくまで1対1だ。そこに、法人の規模は関係ない。

 私は、伊藤さんの話をとおして、所長の皆さんに「原点」を思い起こしてもらいたかった。私自身も、「地域包括ケアとは、やむにやまれぬ思いで、その人を支え切ること」だと、再確認できた。

 そして、職員個々が持っている「やむにやまれぬ思い」を自己実現できる職場をどうつくるか、大きな宿題が残った。