2012.08.05

アスペルガー症候群の人に求刑越える懲役20年

 先月30日に大阪地裁で驚くべき判決が言い渡されたことをご存じだろうか。姉を殺害したとして殺人罪に問われた大東(おおひがし)一広被告の裁判員裁判で、懲役16年の求刑を超える懲役20年が言い渡されたのだ。大東被告は、広汎性発達障害の1種、アスペルガー症候群だと認定され、判決は被告の障がいに対応できる受け皿が社会にないので、「再犯の恐れがあり、許される限り長期間内省を深めさせることが社会秩序のためになる」として、殺人罪の有期刑の上限が相当とされたという。

 信じられない判決だ。障がいをもった人の社会生活を保障する支援体制がないから、刑務所に閉じ込めておかないと「社会秩序」が保てないというのだ。

 成人の再犯率は全体でおよそ50%、殺人などの凶悪犯に限っても40%と言われている。この極めて高い再犯率は大きな社会問題であり、刑務所内、出所後の支援体制が極めて脆弱である結果だと思う。その意味で刑余者の「受け皿」が求められていることは間違いない。しかし、受け皿がないために可能な限り長期間刑務所に閉じ込めるべきというなら、半数近い犯罪者をそうしなければいけないことになる。アスペルガー症候群という「障がい」を理由に求刑を越える有期刑を科すというのは、明らかな障がい者差別だ。判決は、アスペルガー症候群が被告の犯した罪の原因だとし、社会に受け皿がないために、刑務所で「内省を深めさせることが」必要だとしている。もしも障がいが事件の原因だとしたら、その障がいへの支援が行われるべきだ。一体、現在の我が国の刑務所にその機能があるというのだろうか。また、「内省」という言葉は、障がいへの支援とおよそ相いれない。「刑務所で反省していなさい」というのだ。障がいをもった人の「受け皿」とは何かをまったく知らないということだ。

 裁判員裁判で、このような常軌を逸した判決が下されたことに、戦慄を覚える。司法の世界、そして一般社会で、障がい者のことが如何に理解されていないかを痛感する。このような露骨な障がい者差別がまかり通ってはいけない。

 刑事被告人になって長期間拘留されながら、無実を訴え続けた末に無罪判決を獲得した村木厚子さんが、国家賠償の全額を寄付して設立した「共生社会を創る愛の基金」では、早々に、この判決に抗議する意見表明をしています。

http://www.airinkai.or.jp/ainokikin/index.html