2012.11.07

天のしずく  辰巳芳子”いのちのスープ”

 日曜日に千葉劇場で標記の映画を見た。終了日は未定だが、11月16日までは確実に上映されているようだ。

 鎌倉に住む辰巳芳子さんが定期的に実施している「スープ教室」の場面を軸に、各地の生産者、スープ教室で学んだスープ作りを実践する病院などの現場、彼女に手紙を書いた国立療養所長島愛生園住民との出会いなどの場面が挿入される。

 映画を見た翌日にたまたまNHKがこの映画を紹介し、辰巳芳子さんにインタビューしていた。その中の彼女の一言がこの映画の主題そのものと言えよう。「(食をおろそかにする人は)いのちをなめています。」と彼女は言った。87歳に至るまで一貫して「食」にこだわり、「スープ」にこだわってきた彼女の一言は刺激的で重い。戦後この国は、長い時間をかけて育んできた農業と日本型食生活を破壊してきた。命を育む農、食が軽んじられてきた。その結果、食糧自給率は先進国では最低レベルの40%に落ち込んでいる。政府は、将来の自給率目標を50%に設定するが、TPPへの参加をめざすなど、現実には逆行する政策を進めており、到底実現することはできないだろう。

 辰巳さんがスープにこだわる原点は、脳梗塞に倒れ、嚥下機能が衰えた父のために、母娘が工夫を凝らしたさまざまなスープを作ったことだった。嚥下障害がある人には固形物が食べられず、液体もとろみがないと誤嚥を起こす場合が多い。こうした人々にとってスープは栄養に満ち、心を満たすまさに「いのちのスープ」になるのだ。

 映画では、「いのちのスープ」に感銘した医師が、看護師と共に辰巳邸でのスープ教室を受講し、実際に病院で入院患者に対して定期的にスープを飲んでもらう取り組みが紹介されていた。私たちの仕事も、利用者のターミナルを支える場面が少なくない。その方々が口から最後に摂る食べ物が、丹精込めたいのちのスープだったら、どんなに素敵なことか、私はそれを想像しながら映画を観ていた。もし、職員が望むなら、是非、スープ教室を受講させたい。

 格差が広がり、その日の食事もままならない生活困窮者にとってはぜいたくな話だというなかれ。「いのちのスープ」は、炊き出しの豚汁の一碗かもしれない。

 スープ教室には、生活クラブ生協のかつてのマヨネーズ瓶が、何かの調味料のいれ物として使われている。独特の形と青いふたを見れば、それが生活クラブのマヨネーズ瓶だとすぐにわかる人は少なくないだろう。辰巳さんは生活クラブの組合員だ!

 生産者として、山武野菜ネットワークの富谷 亜喜博さんも登場する。何とエンドロールでは、特別協力として生活クラブ生協の名前が出ているではないか!この事実を組合員の皆さんは知っているのだろうか!?

 風の村の職員はもちろん、おおぜいの人に観てもらいたい映画だ。