管理栄養士にっしーの日記⑨
皆さま、こんにちは!
私は、風の村光ヶ丘の管理栄養士です。
あるうららかな休日、私にっしーは家族とランチバイキングの会場にいました。
立ち並ぶ、たくさんの美味しそうな料理の数々。
仕事柄か、私にっしーはこのようなバイキング会場においても、他の家族のように「よっしゃー!!」と急に「はじける」事もなく、バランス良く料理をチョイス。
摂取する量や順番を考えながら・・と、ごく自然に実践してしまいます。
そして、その日のバイキングのメニューの中には、酢豚もありました。
にっしー:(酢豚。)
実は、酢豚を見ると必ず思い出す事があるのです。
ここ光ヶ丘には、利用者様の思い出の味を、ご本人やご家族から私にっしーが聞き取り、そしてそちらを光ヶ丘のお食事で再現して提供する「思い出レシピ」という企画がございます。
この「思い出レシピ」の1回目が酢豚でした。
その利用者様は、体調が優れず食思不振が続いていました。
どんな食べ物なら「負担なく」「美味しく」召し上がっていただけるのだろう。「召し上がりたい」と思っていただけるのだろう・・。
その頃、ここ光ヶ丘ではケアワーカーも、訪問看護師も、調理スタッフも、そして管理栄養士も、いつもその事を思っていました。
ある日、その利用者様のご家族が面会にいらっしゃっている事に、私にっしーは気付きました。
にっしー:(今だ。)
にっしー:「突然失礼いたします。私、こちらの管理栄養士です。最近、○○様のお食事の摂取量が減っているので、少しでも召し上がりたいと思っていただけるようなお食事を提供させていただきたいと考えております。○○様がお好きな味や、子供の頃から親しんでいるお料理、思い出の味など、よろしければ差し支えない範囲でお話を聞かせていただけないでしょうか。」
ご家族は、はじめは少し驚かれたご様子でしたが、すぐにその利用者様の料理にまつわるお話を話してくださいました。
そのお話の中から、その利用者様の思い出の味は、「あまり酸っぱくない酢豚」だという事が分かりました。
それからの日々は、聞き取ったお話だけを頼りに、それがどんな酢豚だったのか?どのように再現するか?という事を、調理スタッフと私にっしーで何度も何度も話し合いました。
「あまり酸っぱくない」というのは、どんな調味料を使うのか?負担なく召し上がっていただくには、肉の調理法をどうするのか?肉の部位や切り方はどうするのか?等々。
そして、私にっしーは調理スタッフとの話し合いの中で見いだした調理法を実際の給食で実施するにあたり、時間配分や安全性に問題は無いか、更なる検証をします。
にっしー:(これなら大丈夫だ。問題ない。)
そして迎えた提供当日。
私にっしーは、コロナウイルスの濃厚接触者と認定され、まさかの出勤停止に。
準備を重ねて迎えた「思い出レシピ」の当日、私は出勤できない。
それを、調理スタッフに伝えました。
調理スタッフ:「にっしーさんが出勤されるまで、みんなで厨房を守ります!今日の思い出レシピも、みんなで頑張ります!」
にっしー:「ほんとうに、ありがとうございます。」
実はその頃、その利用者様は、以前よりもっと食が細くなっていました。
私にっしーは、自宅で祈るしかありません。
にっしー:(酢豚の汁だけでも味わっていただけたら・・。楽しい思い出を、少しでも思い出していただけたら・・。)
自宅で必死に祈りました。
そして、その日の様子について調理スタッフから報告を受けたのですが、この時の内容を私は決して忘れる事はないでしょう。
以下は、その報告の抜粋です。
「今日の様子、にっしーさんに見て欲しかったです。今日の思い出レシピ、調理スタッフ全員、にっしーさんの思いを受けて、もの凄い集中力で仕事しました。緊張しましたが、真心を込めて【あまり酸っぱくない酢豚】をつくりました。にっしーさんがいないから、しっかりやらなくては!と思いました。酢豚が思い出の味の利用者様は、酢豚だけ完食されました。ご家族がお越しになったので、ご家族にも酢豚をお出しして、利用者様とご一緒に思い出の酢豚を召し上がりました。この仕事の意味は、私が思うより、もっと深いという事に今回気付きました。今日は本当に胸がいっぱいです。」
ここ光ヶ丘の訪問看護とも、その利用者様のご様子について、こまめに連絡を取り合っていました。
当日のご様子について、訪問看護からも報告があり、「朝も昼もほとんど口にできませんでしたが、酢豚は「おいしい」と完食され、ご家族も美味しいと完食されました。」との事でした。
そして、「思い出レシピ」の翌日、その利用者様は息を引き取られました。
最後にご家族が私の所にお越しになり、温かいお言葉をかけてくださった事、一生忘れません。
「この仕事の意味は、私が思うより、もっと深い。」
本当に、その通りですね。
「思い」だけでは、どうにもならない事もあるけれど、「思い」が無ければ届かない。
私はその時、そう感じました。
そして、この「思い出レシピ」をはじめ、ここ光ヶ丘での様々な食の企画を、毎回やり遂げてくれる調理スタッフの皆さんは、私の誇りです。
今でも、私にっしーは酢豚を見ると、この時の事を必ず思い出しますし、バイキングで酢豚を見つけたら、どんなにお腹がいっぱいであろうと、必ず食べます。
さて、2025年の夏は、私の自慢の調理スタッフと共に、どんな食の企画をしようかな・・。
「光ヶ丘調理の挑戦」は、今日も続きます。
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